DX NEXT TOHOKU主催のセミナー「経営者の人生の選択肢としての合併・経営統合を考える」の、レポート記事の最終回です。
セミナーの締め括りとなったパネルディスカッションの内容をお届けいたします。
このセッションでは、グーニーズグループの石井さんと、経済産業省・東北経済産業局の桑島さんにM&Aの課題やお二人が思い描く日本の未来についてお話いただきました。
M&Aはもちろん、DXの現場で仕事に向き合うお二人の生の意見は、とても勉強になります。
セミナー動画
「セミナーを全編見たい」という方はYouTubeの動画もご用意していますので、ぜひご覧ください!
YouTubeの動画説明欄にはプログラムの目次とリンクを掲載しておりますので、お好きな箇所からご視聴頂けます。
登壇者プロフィール
石井 宏和 - いしい ひろかず
株式会社グーニーズグループ 代表取締役
広島出身。学生時代に札幌ビズカフェの起業家の先輩と出会い人生観が変わり、これを機に企業誌、起業家精神を学ぶ。卒業後は、地元の広島電鉄株式会社に入社。会社員生活の中で、社会人としての基本的な能力を磨く。その後、多様な視点をビジネスでチャレンジする決意をして、退職。2007年に合資会社neethを設立。
2000年から「北海道の食と観光分野での新規事業創出と人材育成」を手掛ける。合資会社neeth設立後も、札幌ビズカフェの経営メンバーとして活動し、のちに理事長に就任。
現在は、複数社を経営し、地域商社である意食充株式会社では、販路を基点とした商品流通、人材育成のプロデュースを行う。その他、農業体験・食体験をフードツーリズムとして事業展開中。
淡路 義和 - あわじ よしかず
株式会社コー・ワークス 代表取締役CEO
株式会社アイオーティドットラン 代表取締役CEO
一般社団法人 DX NEXT TOHOKU 理事/事務局長
一般社団法人 宮城県情報サービス産業協会 監事/事業共創委員会 委員長
一般社団法人 EO North Japan 理事
秋田県秋田市生まれ。大手ITベンダーでSE/PMとしてキャリアを積んだ後、自律したエンジニアが個性を活かしきれる組織・社会を創りたいという志を持ち6年で退職。異業種事業の新規立ち上げや小規模ソフトハウスの経営執行役を経験したのち、2009年に株式会社コー・ワークス設立。2019年、IoTの普及/促進を目的とし、株式会社アイオーティドットランを設立、エクイティで資金調達しスタートアップにてチャレンジ中。
「少子高齢化の最先端地域・東北から、豊かで幸せになれる未来を創る」をミッションとし、2021年一般社団法人DX NEXT TOHOKU設立、理事/事務局長に就任。東北の地でテックの力を活用し、クリエイティビティを発揮し切ることが出来る文化を根付かせるべく鋭意活動中。
合併・経営統合に対するイメージ
淡路義和(DNT理事・事務局長) (以下、淡路) : 経営者の選択肢としての合併・経営統合を理解しましょうというテーマで、石井さんと桑島さんからたくさん学びを得られたな思っております。
まずは、合併・経営統合に対するイメージをお伺いできればなと。
桑島大地氏(経済産業省)(以下、桑島) : 先ほどのデータにもありますが、全体で見るとかなりプラスのイメージになってるのかなと。やっぱり事業承継(の必要性が高まってきたこと)がかなり大きな契機になっているかなと思います。
それは譲る方も受ける方もそうで、この大きな契機の中で、プラスのイメージというか、そうしていかないと事業を続けていけないよね、みたいな。そういうところもあって、かなり進んでいるのかなと、事業者の方と接していても思いますね。
石井宏和氏(グーニーズグループ)(以下、石井) : 私は桑島さんの資料を拝見して、M&Aに対するイメージが思ったよりすごく良かったっていうことにちょっと驚きを覚えたっていうのが1点目でした。
2点目は、私が東北で関わらせていただいている中小企業経営のご年配の方って、やっぱ頑張り屋さんっていうか。
朝早く起きて夜遅くも働くっていう、本当コツコツ型の素敵な方がすごく多いなと思っていたので、結構体もご無理されてるんだろうな、みたいな。
もちろん、生涯現役で走られるのもアリかなと思ったりしつつも、やっぱり、前線を引いて関わり方を緩くするだけでも、ちょっと変わってくるなと。そういう風に進めばいいなって思いました。
淡路(DNT理事・事務局長) : 石井さんからもお話しいただいたように、東北ならではの特性ってあると思います。
その強みは活かすという意味でも、合併・経営統合という選択肢があるということを、もっともっと理解できると、より良い東北になっていくのかなと思いました。
合併・経営統合はどうしたら進むのか?
淡路(DNT理事・事務局長) : 続いてですね、合併・経営統合について。
合併・経営統合が進むのが良いとか悪いとかって話は一旦置いておいて。お二方から見て、こういう課題があるから、こんな風に課題を突破できたら進むんじゃないかな、という観点でお話をお伺いできればなと思うんですけども。
石井(グーニーズグループ) : どうしたら進むのかっていう点でいくと、キーワードは法制度が変わるとか社会環境が変わる。例えば直近でも電帳法が変わっていくっていう中で、やっぱり経理・会計システム、インボイスも含めて制度が変わりつつあるんで、結構実はここって変わっていく節目になるんじゃないかなと思っているところでした。
また、事業をしまうことももちろん一つの選択肢だと思うんですけど、経験も技術も未来につないで活用していけるものがあれば、やっぱり合併・経営統合もうまく使っていけた方が、結果として日本の経済・地域経済にとってもすごくいいのかなと。やっぱり話し合っていくってことも大事です。
多分、もうちょっとすると良い事例ができてきて、うちもやってみたいなっていう方が結構増えてくると思うので、そうなればいいなと思います。
桑島(経済産業省) : まさに今石井さんが仰った所が大きいなと。
合併・経営統合は、地域の中で噂になっちゃうとか、地方に行けば行くほど正直あって。そういう意味でも、好事例が地域にあると壁が低くなるのかなとは思っておりました。
引き継ぎ支援センターのご紹介もさせていただきましたが、まず1回相談行ってみようとか、金融機関にちょっと聞いてみようとか、そんな話がちょっとずつ広がっていくのがいいのかなと思います。
桑島(経済産業省) : 去年、経産局で取材した事例の中でも、M&Aをやってみようと思って支援センターに相談して、紹介された先が道路の向かいの企業だったという事例もあって。
実はみんな考えてるんだけど、やっぱり東北だと言い出しづらいよねっていう空気ってまだあると思うので、良い事例を地域で広げるというのが重要なのかなと思ってます。
イメージする未来
淡路(DNT理事・事務局長) : 最後ですね、お二方がイメージする未来を。この先にどういう未来があるのかみたいな話を最後にお伺いしたいなと思います。
桑島(経済産業省) : ハードルが高いですね(笑)。やっぱり黒字廃業が増えてるというのは地域にとって損失だと思ってます。
特に、地域にしかないような企業とか産業とか。酒蔵とかもそうだと思うんですけど、1回廃業しちゃうともう1回できないよねっていう産業・企業っていっぱい地域にあると思うんですよね。
地域の産業がちゃんと残っていくっていうのが我々としては大事ですので、あくまで手段ですけれども、M&Aという手段を使って、(地域の産業の存続が)達成されていくのが良い未来かなと思います。
石井(グーニーズグループ) : 私がイメージする未来は2つありまして。
ひとつは、社会全体で見た時には、(事業承継は)ますます加速していくんだろうなとすごく思っています。きっとそうしていった方がいい。
その時に対話をしながら、自分の人生・仕事などについて話し合いながら、世代を超えて事業承継をしていくのが一番いいなと思っていて。
まさに今私のところで事業承継する方は、自分の父親世代だったりとか、(年齢的に)そこから一回り下といった方がすごく多いのですが、やっぱりお互い知らないことを共有し合うっていうのは、すごく良いことだなと思っていました。
きっとこういう事例ってもっと増えるんだろうなと思っています。
一方で私自身に置き換えると、我々のグループのミッションとしましては、2030年に営業利益が3000万円ぐらい出るような事業体を20社作っていくというところがありまして。
そこに向けて、これからも事業承継については進めていきたいなと思っています。
その大前提として、先ほどの桑島さんからもありましたが、グループ化とか、資本提携みたいなところから中小企業で連合体を組んでくっていうのは、経営権が変わらなかったとしても、比較的楽な形でコングロマリットが形成していける、連合体が形成していけるというのは、本当に直近の強みにもなっていくので、そういうところから関わっていくのもすごくアリなのかなと思っています。
淡路(DNT理事・事務局長) : 桑島さんのお話の、1回廃業しちゃうと復活できない業種ってやっぱりありますよね。
伝統ある文化をしっかり守ってるけれども、今の経済合理性の社会の中でなかなか成り立ち得ないみたいな。
そういう所って考える余地がすごいありそうなテーマですよね。なるほどと思いました。
また、石井さんのお人柄なのかもしれないですけど、M&Aって結局企業の話ではあるんですけど、人に最終的にフォーカスしている。
その温かさとか愛が溢れる感じがすごく石井さんの話から伝わってくるなと感じました。
石井(グーニーズグループ) : ありがとうございます。最後に1点だけ。実はですね、うち、シニアスタッフが最近増えてまして。
結構みんな食わず嫌いでスマホも触らない、ガラケーを使ってるとか。65歳過ぎて他の企業での再雇用は難しいけどスペシャリティなスキルを持っているという人がうちのグループに来てですね。
ITトレーニングをすると、LINEとか、Dropbox、Slackとかも使いながら普通に仕事コミュニケーション取れるようになってきたんですよ。っていうのが最近の我々の誇りの部分で。
要は、やる気になればいくらでもITツールは使えると。
71歳のおじいちゃんもITツールを使いながら仕事をやってくれてるんですよ。
彼らは、ずっと家にいるよりも社会に関わっていく・必要とされていくことがやっぱりすごく重要で。そういう意味においては、シニアの方がITを使えるようになるというのは、人生100年社会って言われている中で、必要なんだなとすごく実感していて。
それが最近取り組みとしてやってきて良かったなと思える一つの取り組みです。
淡路(DNT理事・事務局長) : 自治体さんでも高齢者向けに、スマホの使い方とか精力的にやったり、実際増えてきてますもんね。
桑島さんのお話ですが、制度があんなに色々あるって全然知らなかったので、何かあったらすぐ桑島さんに相談しようってと思いました。
皆さん桑島さんに相談しましょう(笑)。
桑島(経済産業省) : ぜひ経産局にご連絡いただければ(笑)。
石井(グーニーズグループ) : 私も酒蔵DXで相談したいです(笑)。
本当にお二方、貴重な話をいただきまして大変ありがとうございました。
まとめ
5回に渡ってお送りしてきました、セミナー「経営者の人生の選択肢としての合併・経営統合を考える」のレポート。いかがでしたでしょうか?
最終回の今回は、計らずしも第1回~4回までの総括+αな内容になりました。
事業の継続は、地域の資産を受け継いでいくことにもつながりますので、M&Aを経営の選択肢に加えるきっかけになれば幸いです。
支援策もたくさんあるので、ぜひ活用しましょう!
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