DX NEXT TOHOKU主催のセミナー「経営者の人生の選択肢としての合併・経営統合を考える」の、レポート記事の第4回目です。
3回目に引き続き、経済産業省・東北経済産業局の桑島さんによる、「中小企業の合併・経済統合に関する動向と支援施策」のお話です。
今回は、M&Aが実際に増加している事や、事業承継のための国の支援策などをご紹介いたします。
セミナー動画
「セミナーを全編見たい」という方はYouTubeの動画もご用意していますので、ぜひご覧ください!
YouTubeの動画説明欄にはプログラムの目次とリンクを掲載しておりますので、お好きな箇所からご視聴頂けます。
登壇者プロフィール
淡路 義和 - あわじ よしかず
株式会社コー・ワークス 代表取締役CEO
株式会社アイオーティドットラン 代表取締役CEO
一般社団法人 DX NEXT TOHOKU 理事/事務局長
一般社団法人 宮城県情報サービス産業協会 監事/事業共創委員会 委員長
一般社団法人 EO North Japan 理事
秋田県秋田市生まれ。大手ITベンダーでSE/PMとしてキャリアを積んだ後、自律したエンジニアが個性を活かしきれる組織・社会を創りたいという志を持ち6年で退職。異業種事業の新規立ち上げや小規模ソフトハウスの経営執行役を経験したのち、2009年に株式会社コー・ワークス設立。2019年、IoTの普及/促進を目的とし、株式会社アイオーティドットランを設立、エクイティで資金調達しスタートアップにてチャレンジ中。
「少子高齢化の最先端地域・東北から、豊かで幸せになれる未来を創る」をミッションとし、2021年一般社団法人DX NEXT TOHOKU設立、理事/事務局長に就任。東北の地でテックの力を活用し、クリエイティビティを発揮し切ることが出来る文化を根付かせるべく鋭意活動中。
M&Aを考える3つのタイミング
桑島大地氏(経済産業省)(以下、桑島) : ここまで中小企業におけるM&Aの意義を3つ見てきましたが、それをまとめた図がこちらです。このグラフはライフサイクルのような形になっています。
M&Aを検討するタイミングとしては、まず、創業の時にリスクを軽減する形で進めるっていうのが1つ目。
そして、成長・成熟局面で経営統合M&Aを活用して生産性向上を図っていくというのが2つ目。
あとは最後の出口のところで「ハッピーリタイアメント」と書いてますが、事業承継の選択肢の一つとして経営統合、M&Aがあると。これが3つ目です。
データが示すM&Aのイメージ向上の事実
桑島(経済産業省) : M&Aの件数はかなり増加傾向になっています。2011年で1687件だったのが、直近だと4280件までなってる。3倍、4倍近く増えてきているという状況になっています。
実施地域を見てみると、関東圏が中心になっています。
売り手と買い手の件数は、地方と都市部で面白いデータがあって、北海道・東北は売り手の方が多いんですね。一方、東京・関東圏で見ると、買い手が多くなっている。
事業を譲り受ける企業は結構首都圏に集中していて、東北とか北海道だと、売りたい企業経営者の方は多くいるんだけど、買い手がなかなかいない、というのは地域的な特徴としてございます。
規模に関しても面白いデータがありまして、ひと昔前まではM&Aというとかなり大きな金額でやり取りされている印象があったと思いますが、かなり小さいものから増えてきています。
500万以下で譲渡されているのが一番割合としては大きくて30%もあります。
企業にとってM&Aってのがすごい身近になっているんですね。
37.2%が「業承継を行う手段として5年以内にM&Aに関わる可能性がある」と回答しているというデータもあります。M&Aがイメージ的にも向上してますよねっていうのがデータ的にも出ています。
経営者の選択肢としてのMA
10年前と比較したM&Aに対するイメージの変化も、買収・売却においてプラスの方がかなり大きくなっています。
これは都心部に限られた話ではなくて、地方企業にとってもM&Aが身近な手段になってきているということが分かります。
多分、東北の中でも結構M&Aの話を最近よく聞くようになってきて、イメージの変化にもつながっているのかなという風に考えています。
M&Aの相手企業はどう探すのか?
M&Aの相手先をどう探すかというのも大きなテーマになっていて、かなり色々な手段があります。
金融機関経由で探すのが一番大きいのですが、専門業者に依頼するとか、この後ご説明する事業承継・引き継ぎ支援センターという経済産業省で設置している公的な支援機関であったり、各町にある商工会議所とか商工会に依頼する割合も多いです。
事業を渡す側の目的も「生産性向上」
生産性向上のお話で、事業を買う側が買収することによって生産性向上を図るという目的がありましたが、譲り渡す側にも、生産性向上の効果が期待できます。
成長の壁に直面する中小企業にとって、グループ化でノウハウをもらって経営を円滑に進めていく事例もかなり出てきています。
グループ化型の経営統合の事例のひとつに「TAKUMINOホールディングス株式会社」があります。福島県の建設会社の事例です。複数の会社とグループ化を進め、人事、会計制度を業務改善していって、出てきた利益を設備投資に還元していくといったビジネスを行っています。
豊富な経産省の支援施策
桑島(経済産業省) : 最後に、経済産業省のM&Aにかかる支援策をご紹介させていただきます。こういう資料は細かくて恐縮なんですが……訳があって、かなり色々な支援策があります。
このテーマだけでこんなに政策があるというのは、経産省の中でも少ないことで、かなり手厚く色々な局面で支援をしています。
マッチング支援
いくつかピックアップしてご説明させていただきます。
支援策の一つが、事業承継・引き継ぎ支援センターによるマッチング支援で、経済産業省が全国47都道府県に設置している公的な支援機関になっています。
全国の譲り受けたい企業と譲り渡したい企業をマッチングするという支援を行っています。
支援件数も年々増えてきていて、成約が1500件近くという状況です。
無料ですので、ぜひ一度県のセンターにご相談に行っていただけるといいかなと思います。
補助金
2つ目は、補助金のご説明です。
事業承継・引き継ぎ補助金ということで、
- 事業承継・M&A後の新たな取り組み
- M&A時の専門家活用
- 廃業・再チャレンジの取り組み
の3類型で支援している補助金です。
やっぱり事業承継・M&Aする時って色々な専門家が入る場面が多いです。契約書を作ったりとか、資産評価したりとか。そういうところで色々な費用かかってくる場合にこの補助金を使っていただけます。
あとは、経営革新というところで、M&Aした後に何か設備投資をするとか、新しい事業に取り組むとか、そういった時に使えるというような枠組みになっております。
税制
3つ目は減税措置、税制のご紹介です。M&Aを実施した後に設備投資する場合の措置。また、賃上げですね。賃上げ税制(賃上げ促進税制)も使えるようになっています。
このあたりも、もっと情報知りたい場合は当局までご連絡いただければと思います。
経産省が策定したM&A実施時・実施後のれぞれの指針
桑島(経済産業省) : M&Aの世界は事業規律が結構求められる世界でして。ですので経済産業省では中小M&Aガイドラインを作成しています。M&Aを適正に進める行動指針、適正な値段などを定めた指針です。
M&A、事業承継に限らず色々な支援施策があります。東北経産局のホームページで随時情報発信しておりますので、ぜひご覧いただければと思います。
淡路(DNT理事・事務局長) : 分かりやすかったですね、本当にありがとうございます。ライフサイクルに合わせた選択肢みたいな話は、あのグラフめっちゃ分かりやすかったですね。
石井宏和氏(グーニーズグループ) : 支援制度、めちゃめちゃ勉強になりました。実は家業を継ぐ時、事業承継補助金使わせていただいて、結構良かったです。
ただ事業承継後にも使える補助金があるって知らなかっので、ちょっと新たな発見でした。
桑島(経済産業省) : 結構そこの支援は今、力を入れてるところだったので。それこそ設備投資に利用できたり、使い勝手は徐々に良くなってるかなとは思いますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
M&Aセミナーレポートの第4回目は、経済産業省・東北経済産業局の桑島さんによる「M&Aの現況」「支援制度」に関するお話でした。
M&Aに対する支援が段階別に用意されているのは嬉しいですね。M&A後の設備投資等に対する支援もあるというのは知らない方が多そうでしたので、これを機にぜひ活用してみてください。
次回は、セミナーの総括となったパネルディスカッションの内容をお届け致します。
お二人の考えるM&Aの課題や日本の未来などについて聞いてみました。
こちらもぜひご覧ください。
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