2023年2月27日(月)、DX NEXT TOHOKU主催の合併・経営統合セミナー「経営者の人生の選択肢としての合併・経営統合を考える」を開催しました。
官民の専門家から事例やデータを交えたお話を聞くことができ、企業の合併や経営統合をポジティブに考るきっかけになりました。
そこでこのDXマガジンでは、2時間弱に渡るこのセミナーの要約を連載形式でレポートいたします。
第1回目は、事業承継の経験豊富なグーニーズグループ代表取締役の石井宏和さんのお話です。
M&Aやバイアウトにまつわる、悲喜こもごもの経験を語って頂きました。
セミナー動画
「セミナーを全編見たい」という方はYouTubeの動画もご用意していますので、ぜひご覧ください!
YouTubeの動画説明欄にはプログラムの目次とリンクを掲載しておりますので、お好きな箇所からご視聴頂けます。
登壇者プロフィール
石井 宏和 - いしい ひろかず
株式会社グーニーズグループ 代表取締役
広島出身。学生時代に札幌ビズカフェの起業家の先輩と出会い人生観が変わり、これを機に企業誌、起業家精神を学ぶ。卒業後は、地元の広島電鉄株式会社に入社。会社員生活の中で、社会人としての基本的な能力を磨く。その後、多様な視点をビジネスでチャレンジする決意をして、退職。2007年に合資会社neethを設立。
2000年から「北海道の食と観光分野での新規事業創出と人材育成」を手掛ける。合資会社neeth設立後も、札幌ビズカフェの経営メンバーとして活動し、のちに理事長に就任。
現在は、複数社を経営し、地域商社である意食充株式会社では、販路を基点とした商品流通、人材育成のプロデュースを行う。その他、農業体験・食体験をフードツーリズムとして事業展開中。
淡路 義和 - あわじ よしかず
株式会社コー・ワークス 代表取締役CEO
株式会社アイオーティドットラン 代表取締役CEO
一般社団法人 DX NEXT TOHOKU 理事/事務局長
一般社団法人 宮城県情報サービス産業協会 監事/事業共創委員会 委員長
一般社団法人 EO North Japan 理事
秋田県秋田市生まれ。大手ITベンダーでSE/PMとしてキャリアを積んだ後、自律したエンジニアが個性を活かしきれる組織・社会を創りたいという志を持ち6年で退職。異業種事業の新規立ち上げや小規模ソフトハウスの経営執行役を経験したのち、2009年に株式会社コー・ワークス設立。2019年、IoTの普及/促進を目的とし、株式会社アイオーティドットランを設立、エクイティで資金調達しスタートアップにてチャレンジ中。
「少子高齢化の最先端地域・東北から、豊かで幸せになれる未来を創る」をミッションとし、2021年一般社団法人DX NEXT TOHOKU設立、理事/事務局長に就任。東北の地でテックの力を活用し、クリエイティビティを発揮し切ることが出来る文化を根付かせるべく鋭意活動中。
M&Aはネガティブな印象? セミナー企画の裏側
最近巷でよく聞く、企業同士の合併・経営統合を意味するM&Aやバイアウトなどの単語。突然電話で連絡が来たり、DMが送り付けられて来たりしていないでしょうか?
そしてそんなことされるととても胡散臭いですよね…。結果として、M&Aとかバイアウトといった言葉にあまり良い印象をお持ちでない方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
実は今回のセミナータイトル「経営者の人生の選択肢としての合併・経営統合」は、今回講演いただいたグーニーズグループ代表取締役の石井宏和さんと事前に打ち合わせしていた際に、彼の口から出てきた言葉です。
石井さんは、大小さまざまなM&Aやバイアウトを経験してきた方ですが、そこから得た学びは、まさに経営者の人生を左右する選択肢、豊かさや幸せを手に入れる手段としてM&Aは重要であるということ。石井さんには、失敗や反省も含めて自身のリアルな経験を話していただきました。
M&Aの実話はもちろんですが、M&Aを統括するグループの管理の話からも学びが得られると思います。
このような話を無料で聞ける機会はまたとありません!
セミナーのタイムライン
今回のセミナーは、次の流れで進行しました。
- 一般社団法人DX NEXT TOHOKUの紹介と今日のテーマについて
- 経営者の人生の選択肢としての合併・経営統合
- 中小企業の合併・経営統合に関する動向と支援施策
- パネルディスカッション
- 合併・経営統合に 対するイメージ
- 合併・経営統合はどうしたら進むのか?
- お二方がイメージする未来
事項より、当日の内容をレポートします。
M&Aを経営の選択肢に!
淡路義和(DNT理事・事務局長) (以下、淡路) : 日本M&Aセンターの数字を見ると、中小企業の皆さん、基本的にM&Aに無関心なんですね。
6割くらい、良いとも悪いとも思わないという印象を持ってるという。
なので、仮説としてですね、もっとこの分野に興味を持てば、幸せになる選択肢って増えるんじゃないかなと。
そこで今日のテーマですね。
「経営の選択肢をどんどん増やしていこう」という意味で、M&Aを理解するというテーマにしております。
今日、お話をいただくお二方は、まさに合併・経営統合を主だった仕事としています。まずは石井さん、よろしくお願いします。
グループ化は戦略。メリットは管理コストの削減
石井宏和氏(グーニーズグループ)(以下、石井) : グーニーズグループの石井と申します。今年で22年目の会社になります。
我々のミッションは「美味しい」というキーワードを切り口に、食を正しく届けて、美味しいと喜んでもらうということ。
やっぱり食べられると心がすごく豊かになっていくというところもあるので。
グループを挙げて食にまつわる事業を展開しています。
我々は今、結果としてM&Aとか事業承継してグループ化という選択肢を採っています。今日はその取り組みをお話させていただきますが、試行錯誤、失敗事例なんかもあったりするので、参考にしていただけたらと思っています。
現在私たちは、グループで6社ほどありまして、企業規模が大体1社5,000万から1億円ぐらいで、利益率が経常利益で20%を出すのを目的にしようと、まさに中小企業連合が集まっている企業体に意図的にしています。
ここに関して(意味が)2つありまして、1つは起業家的であるということ。
もう1つは、グループの方が管理業務やプラットフォーム作りを一括してできるということ。
管理系のコストを減らして、事業の利益を上げていくことを戦略としているので、こうした形を採っています。
今日は私たちの悩みを振り返りながら、事業承継の大事なポイントや悩んだ部分を、お話をできればと思います。
事業承継は経営の選択肢になり得る
石井(グーニーズグループ) : 最近よくあるのが、後継者がいないならまだしも、会社が立ち行かないのでどうにかしてほしい、とか、病気に例えますともう余命何ヶ月みたいな、再生も難しそうな案件もあったりして。
経営者の方も、かなりしんどそうっていうのを見た時に、ここまで頑張り続けてこられたというのは素晴らしいと思う一方で、もっと早い段階で若い後継者に事業を渡していくとか、他者に売っていくことができれば、こんなに苦しい思いをして老後を過ごすとか、せっかく稼いできたのにお金が全部無くなるという状況になることもなかったかもなと。
戦略的に合併とか経営統合も経営の選択肢として取り入れていくことがすごく大事なのかなと思っています。
事例1 : 効率化が最適解ではない。対話が大事
石井(グーニーズグループ) : 私は出身が広島で、母方の曽祖父がエディオンという家電販売会社を創業しましたが(創業時は第一産業)、その前に桂屋産業という会社を作っていました。
(曾祖父の次の代の)祖父が亡くなった後、桂屋産業を一族の別の会社に預かっていただいたんですけれども、その方々がご年齢という話も聞きつけ、母と一緒に皆さんのところに行きました。
実は当初、桂屋産業は、我々のグループに統合をしていくという話が進んでいたんです。
ですが、やはり「歴史ある会社をなくすのは嫌だ」「会社組織もなくしてほしくない」みたいな、いわゆる継承元の人間関係や人間感情の部分があって。
法人格を持ってもう一度会社を設立した上で屋号・看板を渡すということであれば応援するけれども、単純な経営統合は難しいと一族から言われまして。
管理コストがちょっと増えるのはどうかな……と思いましたが、会社を新設してから事業を統合するという選択肢を取らざるを得なかった。
効率化を最適解に考えると合併経営統合が良さそうですが、実際はなかなか難しい。
継承される側と継承する側で、どういった落としどころがハッピーなのかをしっかり擦り合わせていくこと、対話がすごく大事なのかな思いました。
事例2 : 哲学も承継しないと失敗する
石井(グーニーズグループ) : 2つ目の事例です。
私が第二創業で継承した会社で意食充(いしょくじゅう)という会社がありました。もともとneeth(ニーズ)という会社でしたが、事業を受け渡す際に、社名を変更して、私の持っていた株式も半分しっかりと買い取っていただいて。
この、経営者交代型で事業承継をした時に、難しいなと感じたことがありました。
当時の後継者が、経営資本の中の「お付き合い」の部分を、自分が好きか嫌いかという自分軸で判断してしまったことがあったんです。もちろん今は立派に会社を回しているのですが。
当時、ビジョン・哲学をしっかりと後継者に落とし込めなかったのは、私の教育不足だったなと、すごく反省をしています。
ただ野菜を売ったり食品を流通させたりすることが目的ではなくて、「美味しいと言えるシーンをどれだけ作れるか」とか、「そのために新しい商品をプロデュースする」とか、「持続可能に農業経営をしていくために、どれだけ農家さんの農業経営に関わっていけるか」という事業の哲学の部分がスポッと落ちてしまったのかなと。
結果として、継承した2年間で売上も落ちましたし、仕入れ先の農家の方からも「ものだけ買う買わないって話になって面白い話ができてない」といった声が挙がったりしました。
ですので、私は事業承継をして役員からも退いて、退職金ももらったのにも関わらず、2年後には取締役会長としてこの会社に戻らざるを得なかった。
やはり、売上を上げるスキルはもちろんですが、ビジョン・魂も一緒に育てていくことがすごく大事なんだなと学ばせていただいた事例です。
まとめ
第1回目のレポートは以上です。いかがでしたでしょうか?
事業継承が経営の選択肢になるということ、そして「事業継承においては必ずしも効率化が最適解ではない」ということを、石井さんの実体験を交えてお話いただきました。
次回は、引き続き石井さんの考える「複数の事業を管理する経営戦略や今後の展望」についてお届けいたします。
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