令和6年新春座談会‐レポートVol.04

令和6年1月1日(月)に公開した「令和6年新春座談会」のレポート記事の第4回目です。
前回に引き続き、豊かで幸せに生きていける未来を創り、繋げていくために必要なことについてのお話です。


新春座談会動画

「座談会を全編見たい」という方はYouTubeの動画もご用意していますので、ぜひご覧ください!


YouTubeの動画説明欄にはプログラムの目次とリンクを掲載しておりますので、お好きな箇所からご視聴頂けます。

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登壇者

  • 経済産業省東北経済産業局 戸邉千広局長
  • 総務省東北総合通信局 中沢淳一局長
  • 株式会社MAKOTO Prime 竹井智宏代表取締役
  • 一般社団法人宮城県情報サービス産業協会(MISA)会長および 一般社団法人DX NEXT TOHOKU(DNT)代表理事 阿部嘉男
  • 一般社団法人DX NEXT TOHOKU理事 寺田耕也
  • 宮城県 村井嘉浩知事(ビデオ出演)
  • 仙台市 郡和子市長(ビデオ出演)
  • 東北経済連合会 増子次郎会長(ビデオ出演)
  • MISA監事および DNT理事兼事務局長 淡路義和(ファシリテーター)

デジタル化・DXを支援

増子次郎氏(東北経済連合会 会長): 東北・新潟の企業がデジタル化・DXを取り入れ産業競争力を強化すること、いわゆる「稼ぐ力を高めること」が必要だと考えております。このために、東経連ビジネスセンターでは、東北6県、新潟県の企業を対象に、「デジタル化・DX支援事業」に取り組んでいます。
この事業では、「社内業務のデジタル化・DXに取り組みたい」「新しいビジネスモデルのチャレンジにDXを活用したい」という企業に対して、DX NEXT TOHOKUなどと連携しながら、専門家を企業に派遣し、デジタル化による効率化・生産性向上、さらにはDXの推進の支援を行っております。
すでに、約20社の支援活動を行いました。支援を受けた企業からは、「漠然とした課題認識を持ちつつ、雲をつかむような状態であったが、改めて自社の課題に向き合うことができた」あるいは「DXに関して、自社事業の洗い出しができた」などの声を頂戴しております。

また、東北経済産業局、東北総合通信局、東経連の3者が事務局となり、一昨年、東北地域デジタル化推進関係省庁等連絡会を設置し、デジタル化に関する国の施策を組織的に東北の企業などに伝える枠組みを作り、積極的に情報提供に取り組んでおります。

産業競争力強化という観点では、こうしたデジタル化・DX支援に加えて、東北で進められている科学技術プロジェクトにも期待しております。
具体的には、ITERブロードアプローチ、国際リニアコライダーの誘致、ナノテラスの活用、福島イノベーション・コースト構想などの科学技術プロジェクトを推進し、イノベーションの創出につなげていくことが、東北・新潟の産業競争力強化に大きく貢献するものと考えております。


  • デジタル化・DX支援東北6県・新潟県の企業のAIやIoT、ロボットなどのデジタル化による効率化・生産性向上、更にその先のDXの推進を支援します。
    https://www.tokeiren-bc.jp/menu2.html#menu2-04

AIを使いこなして少子高齢化のインパクトを制する

竹井智宏氏(株式会社MAKOTO Prime 代表取締役): 私からは、ある意味「毒を以て毒を制す」ということを提案させていただきたいと思ってます。
一つ目の毒は、先ほどからの話にあります少子高齢化のインパクトですね。これが社会にマイナス影響を与えるんじゃないかという毒なんですけども、これをAIのインパクトで制すということを考えたいんですが、私自身、少子高齢化のインパクトよりAIのインパクトの方が相当でかいと思ってるんですね。しかも、短期であると。
というのも、AIがこのまま浸透していくと何が起こるかというと、一つは大量の失業者が出ると言われてますね。AIを使いこなして人の30倍も仕事をするような『デジタル・ケンタウロス』と呼ばれるような人たちが生まれ、片や知識労働の中間層は職を失ってしまい、エッセンシャルワーカー的な方々は残っていくという、デジタル・ケンタウロスとエッセンシャルワーカーの2極化が起こっちゃうってことですね。


  • デジタル・ケンタウロスデジタルという馬力を乗りこなし、人間ならではの強みを生かせる人。

  • エッセンシャルワーカー生活必須職従事者。医療や福祉、第一次産業、行政、物流など、社会生活を支える職種に従事する人。

地球全体がこの急速に来る労働構造の変化にどう対応していくかっていうのはものすごく大きなインパクトで、ここ5~10年とかで起こることなんですね。なので、少子高齢化のインパクトよりずっと大きい。

ただ、この東北という地は、実は俯瞰的にみるとそのインパクトが最も少ない地域になるかもしれないと思います。というのは、幸か不幸か知識労働の中間層がそれほど厚くないといところですね。そうしますと、そのインパクトが最も緩いこの地で、AIはネガティブ要因を気にせず、どんどん利活用を進めることができますので、それでもってこの少子高齢化のインパクトを克服できる原動力になるんじゃないかなと思います。

その時、地域社会のために生成AIをはじめとしたAIをどう利活用してくのか、人間に残された仕事って何なのかっていうところを突き付けられてしまうんですが、そのときにやっぱり人間がとるべき仕事っていうのは、アントレプレナーシップだと思うんですね。


  • アントレプレナーシップ新しい事業を創造しリスクに挑む姿勢。イノベーションをもたらし新しい価値を生み出す思考・行動要素。

というのは、AIはどこまで行っても責任の主体にはなれないんです。いろんなタスクはこなすことはできますけども、責任の主体にはなれないので、やっぱり人間が率先してアントレプレナーシップを発揮しながらチェンジエージェントとなって世の中とか構造とかを変えていくところを担うべきだと思ってます。

まとめると、技術の進歩も大事ですし、利活用も大事なんですが、実はそれを主体的に操っていく人・率先して率いていく人っていうのが大事になるので、その部分を地域を上げて後押ししていくのが大事なんじゃないかなと思っています。

社内でデジタル人材を育成

寺田耕也氏(一般社団法人DX NEXT TOHOKU 理事)(以下、寺田): うちの会社自体は、実は事業会社だという風に思っています。化学製品だとか、化粧品の製造販売がメインの事業で、それにプラスして、デジタル化・DX化っていうのを事業化してます。
そのきっかけは、ある非常に優秀な女性が秋田の地方銀行にお勤めだったんですが、旦那さんの転勤の都合で北海道に行かなきゃいけなくなったと。そこでもう働くことができなくなって、っていう状態を聞いた時に、じゃあうちのDX化・デジタル化を遠隔にいながら進めてくれないか、ということでスカウトしまして、それがうちのデジタル化・DX化の事業の始まりなんですね。
非常に先進的な取り組みで、半年間勉強だけさせたんです。文系の銀行員で、デジタル化とか全く関係なかったような人材に半年間勉強するっていう仕事だけをしてもらったら、結果、今の主力メンバーになってるっていう現状があって。

いまリスキリングだとかそういったものが言われてます。今、地方の会社でDXが進まない現状の一番大きい理由はデジタル人材がいないからっていうことになるんですけども、育てればいいと思ってます。 先日、悲しいんですけどうれしかったのが、入ってきたときには全くデジタル人材でもなんでもなかった、うちで勉強を積んでDXのチームに入った人材が、仙台のDX会社に転職が決まったんですね。これはもう本当にステップアップだし、非常に私としても喜ばしいことだなと思って、本当にみんなで「おめでとう」と、「頑張ってこい」ってことで送り出したんですけど。
こういう、実は社内にデジタル化できる人材はいるんだけども、そこに目が向いていない結果、東北の企業の競争力の低下につながってる、DX化ができないっていう言い訳につながってしまってるのは本当にもったいないなと思っていて。

私のように、それこそ「あ、この人ってひょっとしたらできるかもしれないな」っていう人材を遠隔でもいいからやれるっていう状況を考えれば、十分に東北の企業がデジタル化して競争力を高めてくってことはできるなという風に思ってるので、今後そういった取り組みをどんどん進めていきたいなと思ってますし、当社でできるんだから他の会社でもできるというのは、今自信を持って言えると思ってます。

淡路義和(MISA監事および DNT理事兼事務局長) : 人材を育成していくのは、率直に言うと、余裕が必要になってくるのかなと。時間の余裕、お金の余裕、あと人の余裕みたいなところがやっぱり必要になってくると思うんですけれども、特に零細企業とか、目の前の業務をこなしていかなければならない、日々精いっぱい生きていかれている、そういった企業さんはなかなか難しいという現実もなんとなくあるのかなという風に思ってるんですけども。次の一手として何かお考えのことってありますか?

寺田: 中小零細の会社さんであれば、1人の人材で、2~3社見るっていうのはできると思うんですね。シェアができるっていうことがまず1点。

あと、うちも別に中にIT人材がいたっていうわけではなくて、その人に半年間勉強だけしてもらうときには、それこそDXの会社、ITの会社に協力いただいて指導していただいたんですね。これって東北が持つネットワークの力であったり、人の繋がりであったりとか、そういったものを活用することによって十分にできるという風に思ってます。

で、東北だけで足りなかったら、実は東北のその分野でのナンバーワンの人って、全国のナンバーワンに、場合によっては世界のナンバーワンにつながってるので、本当にこのぎゅっとしたコミュニティっていうのは、窮屈だったりもするっていう感じる人もいるかもしれないですけど、私としても宝でしかないなっていうのをすごく思ってます。

規制の緩さと落とし込みを武器に

阿部嘉男氏(MISA会長および DNT代表理事): 私は宮城県もそうですし、東北のIT業界の団体の上をやってるわけですけど、やはり私たちがどう上手くお手伝いできるか、っていうものがすごく大切になるかなと思ってるんですね。
確かに、お手伝いすることによって社内に人材を作っていくとか、そのまま、下手すると入ってもいい、っていうところをどう作っていくかっていうことが今からってすごく大切になってくるのかなと思うんですよね。
今、竹井さんが話したように、ちょっとマインドが変わってきているのかもしれないなって気はしてます。経営者のマインドも少し変わっていってるので、そういう風なチャンスは非常にあるかなと思ってます。

実は、日本って規則が緩いんで、世界ではやりやすい国だと思ってるんですよ。それはAI、仮想通貨やアニメもそうなんですけど、規制が緩いということが一つの武器になるって私は思ってるんですね。
で、それをどう利用しながら日本の中に落とし込んでいくのかっていうのが、実は一番大切なことのような気がします。
生成AIとか、当然アメリカなんかが非常に先行してるわけですけども、日本って多分、新しいもの創るよりは、どう使うかっていう人たちが得意だと思うんですよ。
例えば車だと、メルセデスが内燃機関をやってフォードが流行らせて、でも今勝ってんのってトヨタだったりするじゃないですか。それは何かっていうと、使っていく人が本当に使うっていうところで多分日本人って非常に得意なような気がするんですよね。それをどう落とし込んでいって、それを1番最初、東北でどうやっていくかっていうことが、1番のやることなのかなと私は思ってますけども。

まとめ

4回に渡ってお送りしてきました、「令和6年新春座談会」のレポートは以上です。いかがでしたでしょうか?
動画では、皆様の2024年の決意表明をお聞きしています。是非動画もご覧ください。

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