令和6年1月1日(月)に公開した「令和6年新春座談会」のレポート記事の第2回目です。
前回に引き続き、少子高齢化をどう捉えているか、またこの先直面する問題についてのお話です。
今回は、業界団体・企業の視点でお聞きした内容をお届けいたします。
新春座談会動画
「座談会を全編見たい」という方はYouTubeの動画もご用意していますので、ぜひご覧ください!
YouTubeの動画説明欄にはプログラムの目次とリンクを掲載しておりますので、お好きな箇所からご視聴頂けます。
登壇者
- 経済産業省東北経済産業局 戸邉千広局長
- 総務省東北総合通信局 中沢淳一局長
- 株式会社MAKOTO Prime 竹井智宏代表取締役
- 一般社団法人宮城県情報サービス産業協会(MISA)会長および 一般社団法人DX NEXT TOHOKU(DNT)代表理事 阿部嘉男
- 一般社団法人DX NEXT TOHOKU理事 寺田耕也
- 宮城県 村井嘉浩知事(ビデオ出演)
- 仙台市 郡和子市長(ビデオ出演)
- 東北経済連合会 増子次郎会長(ビデオ出演)
- MISA監事および DNT理事兼事務局長 淡路義和(ファシリテーター)
デュアルライフで活躍の場を広げる
増子次郎氏(東北経済連合会 会長):
ご承知のとおり、東北・新潟は全国で最も早く人口減少・少子高齢化が急速に進行する地域です。現在の地域社会の構造を維持したままで人口減少・少子高齢化が進行した場合、経済や暮らしなどの幅広い分野で、地域社会の存亡にかかわる深刻な事態が生じることを危惧しております。
私共、東北経済連合会は、この厳しい状況を受け止め、2017年に新ビジョン「わきたつ東北」をとりまとめ、戦略1として「地域社会の持続性と魅力を高める」を掲げ、活動しております。具体的には、「デュアルライフ東北・新潟」を提唱し、多様な人材の活躍の推進の舞台を東北・新潟に作りたいと考えております。
「二拠点生活」とは、二つの地域に拠点を持ち、生活することです。例えば、平日は首都圏で暮らして働き、週末は東北・新潟でリラックスする。また、首都圏での仕事とは別の仕事を東北・新潟で実践し、二つの拠点で活躍する。あるいは、東北・新潟を第一の拠点としながら首都圏に通うなど、多種多様なデュアルライフのスタイルがあります。
リモートワークなど、働き方はより自由に・より効率的になりました。また、兼業や副業など、新たなフィールドでチャレンジする動きも活発になってきております。これに伴い、暮らし方も多様化し、よりよいライフスタイルを手に入れるための手段の一つとして、デュアルライフという選択肢があると考えております。
デュアルライフを実現するためにも、デジタル化・DXの推進は極めて重要だと考えております。
ポジティブな見方をするとビジネスチャンス
竹井智宏氏(株式会社MAKOTO Prime 代表取締役): これまで、人口減少・少子高齢化というところで、ちょっとトーンが暗めの話もあったかと思いますが、私自身、ポジティブな見方を取るようにしてます。
東北地方は人口少ない、少ない、と言われてますけれども、全然そんなこともないんじゃないか。全体で行くと800万人~900万人いるわけですから、国家レベルはいるんですよね。
私もいろいろな世界とやりとりがありましたけれども、現状の東北地方でも、相手国の人口よりも多いみたいなところはあります。GDPで言っても、同じくらいの規模の国があるわけですから、実はまだ大きいんじゃないかと思っています。
歴史を遡ると、明治維新当時は人口が日本全体で3000万人しかいなかった訳ですから、それに比べれば900万人も居て出来ないことはないでしょう?みたいなことはあると思うんですよね。
人口が少なければダメで、多ければいいのかって、そんなことはないと思いますし、少なければ稼げないのかっていうと、大谷翔平は一人で1000億稼ぐ訳ですから、それに比べれば我々100万人も200万人もいて稼げないわけないでしょう、ということだと思うんですよね。
あと、ポジティブな見方では、人口が減少して経営者も高齢化していくという中で、事業承継の話が問題になります。逆に言うと、我々脂が乗った世代から見ますと、世代交代が一番早く行われる地域になるかもしれないと。ということは、私たちのリーダーシップをもって何か物事を変えていったり、新しい考え方をもとに地域を引っ張るということもできるかもしれないと、決してネガティブな話ばっかりじゃないんじゃないかなと思ってます。
私自身、現在生成AIに取り組んでおりまして、これが地域にとっても非常に大事だと思って推進してるんですけども、人口がもし減るのであれば、逆に言うとそこの足りない部分をAIであったりロボットであったり、テクノロジーで埋めていくということで、早くに産業構造・ビジネスの構造も変えていくことができるという意味では、チャンスしかないんじゃないかなという風に思います。
これまでもスタートアップの部分では、私自身10年以上やらせていただいたんですけども、東北はもともと、スタートアップなんか根付かないよ、生まれないよ、という風に言われ続けてきました。今も、人口減少だからしょうがないよね、みたいな、同じような空気を感じますけれども、ここは変えられる。
実際この10年経って、ジーデップ・アドバンスさんが上場したり、それから12月には雨風太陽さんが岩手県から上場したりしてます。そいういった人たちがどんどん出てくるって10年前誰が想像したでしょう、ということであれば、ここから先の10年も必ず変えられるんじゃないかなと思ってます。
地方ならではのメリットを生かす
寺田耕也氏(DNT理事): デュアルライフということでご紹介いただきましたけども、山の中と秋田の駅前と2拠点の生活をしてまして、山の中の家はさらに高齢化が進んでいて、大体集落で30件くらい家があるんですけど、10年後にいるのは10%くらいじゃないかなというような、限界集落を超えていくっていうところを目の当たりにしながら生活をしてます。 ただ、捉え方だと思うんですよ。竹井さんもおっしゃったように、本当捉え方で、ある種課題先進県とも言えると。これって日本では他の県が後から追ってくる状態なので、まず秋田とか東北っていう地を使ってマーケティングをやってもらおう、というのを今発想としては持っています。
コロナになって非常に良かった点としては、「あれ?どこでも働けるじゃん」っていう風になったんですよね。それで驚くような非常に優秀な人材が秋田県に移住してきて働いて東京の仕事をやるとかあって。しかもその人たちがさらに秋田・東北の魅力に気づいて、類は友を呼ぶで、どんどん人を呼んでくるというような世界がなんとなく見えてきてるなという風に思っています。
タワーマンションで綺麗な夜景を見るより、田舎で大きな家に住み自分の好きなことをやるっていうライフスタイルに憧れる人がすごい増えてるなと思うんです。私は東京出身で、秋田に20年前に移住してきたとき、なんとなく「あ、秋田に行ったんだ…」というような目があったんですけど、今「すごい楽しそうだね!」とか「羨ましいね!」と言われるようになってると。地方は、これから理想の生活・ライフスタイルを送るような場所になってくるんじゃないかなと思ってるので、この辺をどんどんアピールして。
さらに実は事業が作りやすいと思ってるんですよね。 地方の方がよっぽどコストも安いですし、いろんな人の繋がりも深い、というところで事業は非常に作りやすい場所だと思っているので、この辺りを生かした事業をどんどんやっていきたいな、という風に思っています。
本当に何もネガティブなことは感じてないし、可能性しか感じてないので、この辺をぜひやりたいなと。DX・ITが入ってきたことによって、人は減りますけども一人当たりの生産性を上げることができるので、この辺もフル活用して。
ちょっと笑い話ですけど、うちの女子社員に、あるDXの技術、具体的にはRPAなんですけど、PC業務を自動化できる技術を導入するって話をしたときに、「社長、私の仕事なくなっちゃいます」って言ったんですけど、もう今はそれを使いこなして生産性を上げていっているようなものを見たときに、やっぱりDXによってこういった課題解決もしていけるなという可能性を今十分感じながら事業展開しています。
まずは少子化の対策を
阿部嘉男氏(MISA会長およびDNT代表理事):
皆さん高齢化を話すと思うんですけど、私はどっちかっていうと少子化の方を皆で議論したほうが良いかなと思ってる方なんですよね。
子どもが急激に減っていくと、いくら年寄りが元気になったとしてもなかなか補えないような気がして。少子化をどう止めていくか、もっと子どもの産みやすい環境をどう作っていくか、ということを真剣に国・自治体・企業考えていかないとダメだろうと。
先進国で唯一成功してるのってフランスくらいしかないですよね。フランスはシングルマザーをどうケアしていくかっていうことを非常に取り組んだわけで。
日本も古い考えとかを取っ払ってですね、まず子供を産みやすい環境をどう作っていって、どうやって育てていくかっていうことを真剣に考えていかないと、いくら年寄りが元気になってくれって言ったって私はダメだと思ってるんですよ。そうじゃないだろう!と。
まず子供を増やせというか、減るのをもっと緩やかにするというのが最初なんじゃないかなと。実はいつもこの議論を聞いてるときに「そっちじゃないんだよな」と思いながら聞いてますね。
まとめ
第2回目のレポートは以上です。いかがでしたでしょうか? 業界団体・企業の視点から少子高齢化の課題をお聞きしました。 次回は、第二部の豊かで幸せな未来を創り次世代に繋ぐために必要なものについてお届けいたします。