デジタルガバナンス・コード3.0とは

「デジタルガバナンス・コード3.0」は、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)経営を推進し、企業価値向上を実現するために実践すべき指針をまとめたものです。
上場・非上場、企業規模、法人・個人事業主といった枠組みを超えて、幅広い事業者を対象としています。
各事業者は、自社の状況に合わせて、例えば投資家との対話や今後の取り組みの指針として、本書を活用することが推奨されています。


DX経営の重要性

現代社会では、データ活用やデジタル技術の進化、グローバル化が進展しており、企業はこれらの変化を捉え、DXに取り組むことで価値創造経営を実現することが求められています。 DXを推進することで、以下のようなメリットが期待されます。

  • 既存ビジネスの深化・新規ビジネスの創出
    データとデジタル技術を活用することで、既存ビジネスモデルを深化させたり、新規ビジネスモデルを創出したりすることで、顧客提供価値や収益の向上が見込めます。
    人的資本経営の実現: DX推進を通して、企業は生産性や従業員エンゲージメントの向上、創造性人材の育成といった恩恵を受け、優秀な人材を獲得し、人的資本経営の実現へと繋げることができます。
  • コスト・損失の最小化
    サイバーセキュリティ対策はDX推進の前提条件であり、必要な投資と捉えるべきです。
    サイバーセキュリティリスクを把握・評価し、対策を実施することで、企業活動におけるコストや損失を最小限に抑えることができます。
  • 付加価値向上と信頼性向上
    個別企業のDXを超えて、国境・産業・組織を超えたデータ連携を行うことで、さらなる付加価値を高めることが可能となります。
    その際には、法令等に従い適切なデータ保護措置を実施することで、取引先等からの信頼性向上にも繋がります。

DX戦略策定と実行における経営者の役割

企業がDXによる持続的な企業価値向上を図るためには、DX戦略を人材戦略と同様に、経営ビジョンの実現に向けた中長期的な戦略として捉える必要があります。
そのためには、経営者が以下の点について意識改革を行い、主体的にDXを推進していくことが重要です。

  • DXへの投資は価値創造への投資
    DX推進に必要な資金は、単なるコストではなく、未来への価値創造に向けた投資であるという認識を持つことが重要です。
  • DX推進は経営陣と取締役会の責任
    DX推進は、IT部門だけに任せるのではなく、経営陣や取締役会が主導的な役割を果たし、責任を持って推進していくべきです。
  • ステークホルダーとの積極的な対話
    自社のDX戦略について、社内外のステークホルダーと積極的に対話し、理解と協力を得ることが重要です。

具体的には、企業は以下4つの点を重視してDX戦略を策定・実行する必要があります。

  1. デジタル技術を経営資源と捉え、DX戦略を策定する
    デジタル技術を新たな価値創造のための重要な経営資源として捉え、それを活用したDX戦略を明確に描く必要があります。
  2. デジタル技術を収益向上に繋げる
    デジタル技術は、既存ビジネスの効率化・省力化だけでなく、収益に直結する既存ビジネスの付加価値向上や新規デジタルビジネスの創出にも活用していく必要があります。
  3. ITシステムの技術的負債化を防止する
    ITシステムが技術的負債化しないよう、計画的なパフォーマンス向上を図り、常に最新の状態を維持していくことが重要です。
  4. 組織横断的な取り組み体制を構築する
    DX推進には、IT部門、DX部門、事業部門、経営企画部門など、関係部署が連携し、組織横断的に取り組む体制を構築することが重要です。

デジタルガバナンス・コード3.0の構成

デジタルガバナンス・コードは、「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」という枠組みで構成されています。

3つの視点

  • 経営ビジョンとDX戦略の連動
    経営ビジョンとDX戦略を一体化し、DX戦略が経営ビジョンの実現を支えるように策定・実行する。
  • As is - To be ギャップの定量把握・見直し
    経営ビジョン実現を阻害するデジタル面の課題を特定し、現状と目指すべき姿とのギャップを定量的に把握し、DX戦略を継続的に見直す。
  • 企業文化への定着
    持続的な企業価値向上を支える企業文化は、DX戦略の実行を通して変革・醸成されるものであるという認識を持ち、目指すべき企業文化を明確にする。

5つの柱

  1. 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
  2. DX戦略の策定
  3. DX戦略の推進 (組織づくり、デジタル人材の育成・確保、ITシステム・サイバーセキュリティ)
  4. 成果指標の設定・DX戦略の見直し
  5. ステークホルダーとの対話

各柱は、「基本的事項」と「望ましい方向性」の2つの区分で構成されています。
基本的事項は、情報処理促進法に基づく指針と施行規則の内容を根拠としており、「DX認定制度」の基準となっています。
望ましい方向性は、「DX銘柄」や「DXセレクション」の評価・選定基準として活用されます。

関連情報へのアクセス

「デジタルガバナンス・コード3.0」では、DX認定制度、DX銘柄、DXセレクション、価値協創ガイダンス2.0、人材版伊藤レポート2.0など、関連する情報へのURLが記載されています。 これらの情報は、企業がDX経営を推進する上で参考になるでしょう。


まとめ

「デジタルガバナンス・コード3.0」は、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、持続的な企業価値の向上を実現するための包括的な指針を提供します。現代の急速なデジタル化の進展に対応し、企業はデジタル技術を活用して既存ビジネスの深化と新規ビジネスの創出を図り、人的資本経営を実現し、コストと損失を最小化することが求められます。

特に、経営者はDX戦略を中長期的な視点で捉え、自らが主体的に推進することが重要です。ステークホルダーとの対話を通じて、企業全体で一体となったDX戦略の策定と実行が求められます。また、ITシステムの技術的負債化を防ぎ、組織横断的な取り組み体制を構築することも不可欠です。

「デジタルガバナンス・コード3.0」は、経営ビジョンとDX戦略の連動、現状と目指すべき姿のギャップの定量把握、企業文化への定着を3つの視点として掲げ、さらに経営ビジョン・ビジネスモデルの策定、DX戦略の策定・推進、成果指標の設定・見直し、ステークホルダーとの対話を5つの柱として具体的な取り組みを示しています。

これらの指針を実践することで、企業はデジタル技術を経営資源として最大限に活用し、新たな価値創造と企業価値の向上を実現することができるでしょう。

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