DXの必要性が広く認知され、多くの企業がDX推進に取り組み始めていますが、未だに「何をすべきか」を具体的な計画に落とし込めない企業も多く存在します。
そこで、この記事では、DXの進め方を具体的な手順に分けてご紹介いたします。
主に、DXを進めるうえでの大枠の流れをご紹介し、記事の最後に、組織として進める場合の手順をご紹介いたします。
参考になる記事のリンクも掲載していますので、併せてご覧いただければと思います。
DXとは? DXとデジタル化は違うのか?
まず、DXの言葉の意味について見てみましょう。
DXは「Digital Transformation」の略で、直訳すると「デジタル変革」を意味します。
デジタルトランスフォーメーションの意味を見ると「デジタル化とは違うのか?」と疑問に思われる方もいるかもしれませんが、デジタル化もDXのひとつです。
DXには、いくつかのステップがありますが、その中に「デジタル化」も含まれます。
DX推進のステップ
では、DXの手順、DX推進のために必要なステップとは何なのか、具体的に見ていきましょう。
DXのプロセスは、以下のステップに分けることができます。
- デジタイゼーション
- デジタライゼーション
- データドリブン経営
- データとデジタルを活用したビジネスモデルの変革
DXとは取り組みであり、それ自体がゴールではない
少しややこしいのですが、「デジタルトランスフォーメーション」とは、上述の1~4の取り組みを指します。
ここで、経済産業省が公開する資料「デジタルトランスフォーメーションの河を渡る」を見てみましょう。
この資料には、DXを表す以下のイラストが紹介されています。
上記の図では、現行ビジネスの世界の大陸とデジタルエンタープライズの大陸があり、その間に大きな河が流れています。
この資料では、デジタルエンタープライズを 「ビジネス戦略とITシステムを迅速かつ柔軟に対応させていく企業」 と定義しています。
そして、デジタルトランスフォーメーションを「デジタルエンタープライズの世界にたどり着くためのプロセス」であると説明しています。
デジタルトランスフォーメーションはデジタル変革の河を渡るプロセスであり、デジタルエンタープライズに至る道筋である。
目指す対岸や河の幅、深さは企業によって変わってくる。それぞれに合った渡り方で取り組む必要がある。
出典 : 経済産業省「デジタルトランスフォーメーションの河を渡る」
つまり、上述のDXの手順の1~4の取り組みそのものがデジタルトランスフォーメーションという事になります。
そして、1~4を全て行ったから終わりということでもありません。
デジタル技術とデータを活用し、時代のニーズに柔軟に対応できる組織であり続ける事が、デジタルトランスフォーメーションにおいて重要です。
ステップ1 : デジタイゼーション
DX推進のはじめのステップがデジタイゼーション(Digitization)です。
デジタイゼーションとは、「業務フローの中の業務単体をデジタル化する事」です。
例えば、昨今当たり前になりつつあるペーパーレス化も、このプロセスに含まれます。
ペーパーレス化の一環でもありますが、書類への押印を電子押印にすることもデジタイゼーションと言えます。
業務に欠かせないWordやExcel、Power PointなどのOfficeソフトも最近はオンラインで利用できるようになりました。また、OfficeソフトのGoogle版ともいえるGoogle Docs、Google Sheetなどの利用も一般的になりましたが、これらの利用もデジタイゼーションのひとつです。
また、コロナ禍において当たり前になったウェブ会議、オンライン商談もデジタイゼーションと言えます。
このように「特定の業務やアナログツールをデジタルに代える事」がデジタイゼーションです。
ステップ2 : デジタライゼーション
DX推進の2つ目のステップがデジタライゼーション(Digitalization)です。
ステップ2のデジタイゼーションが「特定の業務やアナログツールをデジタルに代える事」に対して、デジタライゼーションは、「業務プロセスをデジタル化する事」です。
また、経済産業省ではデジタイゼーションを「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」と定義しています。
営業活動のデジタライゼーション
デジタライゼーションの例のひとつに「営業活動のオンライン化・自動化」が挙げられます。
ツールとしては、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント/顧客関係管理)、SFA(セールス・フォース・オートメーション/営業支援システムMA(マーケティングオートメーション)などが有名です。
例えば、これらのツールには次のような利点があります。
- 顧客情報の蓄積による新しいニーズの発見
- 営業担当に依存しない営業活動
- 顧客のニーズをグループ化して、ニーズに応じたキャンペーンの実施
- マーケティング活動の自動化
- 社内承認ワークフローの自動化
- 売上予測
業界・業種によってはお客様と相対してお話する必要もありますが、そのような場合でも、上記のように、それ以外のプロセスをオンライン化・自動化することができます。
データを一元管理することで、組織全体としての知見も蓄積され、誰もがその情報にアクセスすることも可能になります。
製造工程のデジタライゼーション
製造業の現場ではIoTを活用した製造工程のデジタライゼーションが行われています。
IoTを活用することで、従来インターネットに接続されていなかったモノをインターネットに接続し、データを取得・蓄積したり、取得したデータに応じて何かしらのフィードバックを行う事が可能になります。
例えば、人を介した作業に、IoTを活用することで、「どんな作業が行われているかの見える化」「作業が正しく行われているかの判断」が行えるようになります。
これにより、従来は製造業の現場で、監督が現地でチェックしていた作業を遠隔地で行えるようになり、また生産製品の良品精度の向上にもつながります。
これらのように、業務プロセス全体をデジタル化する事が、デジタライゼーションなのです。
ステップ3 : データドリブン経営
DX推進の3つ目のステップがデータドリブン経営です。
データドリブンとは日本語で「データ駆動」を意味します。
この言葉自体は2010年代には既に登場しており、「データドリブン・マーケティング」「データドリブン時代」などという単語を耳にした方もいるのではないでしょうか。
データドリブン経営は、単語の意味の通り、「データに基づいた経営」です。
デジタイゼーションやデジタイゼーションを行う事で、データの蓄積が可能になりますが、その蓄積されたデータを元に、既存事業や新規事業を成功に導く事がデータドリブン経営です。
データドリブンなマーケティング・営業
例えば、「営業活動のデジタライゼーション」の項でも触れましたが、蓄積された顧客データを分析することで、顧客が持つニーズを発見し、顧客を分類することができます。
そして、それぞれのニーズに応じた、適切な施策を検討することが可能になります。
この「ニーズ」は、組織として既知のものもありますが、分析を通じて発見できる新たなニーズもあります。
また、データ分析を通じて、うまくいかなかった事例も見つける事ができ、無駄を排除することもできます。
このように、デジタイゼーションやデジタイゼーションを通じて蓄積されたデータを見える化し、分析し、事業に生かす事がデータドリブン経営です。
データドリブンな人事
データドリブン経営は、人事の分野でも注目を集めています。
人事業務のデジタライゼーションを行うと、以下のようなデータが蓄積されます。
- これまでの労働時間や今後の推定労働時間
- 強みと弱み
- これまでの成果
- 人事評価
- 従業員の意見
- 離職率
- 罹患率
- 有給休暇取得率
これらのデータは、次のような施策に生かす事ができます。
- 効果的なチーム構築
- 人材育成
- 従業員に対するケア
- 足りていない人材確保の検討
- 働きやすい環境の整備
人事の世界では、組織の資源のひとつである「人材」を最大限に活用し、事業を成功に導く「戦略人事(戦略的人的資源管理)」という考え方が以前から注目されていますが、DX時代において、戦略人事が実現しやすくなっています。
ステップ4 : データとデジタルを活用したビジネスモデルの変革
ステップ1~3は、IT技術の活用や、それによって蓄積されたデータを元に経営戦略を行うというステップでしたが、ステップ4は、ビジネスモデルの創出・変革というプロセスです。
このプロセスでは、デジタル技術の活用や、それによって蓄積されたデータを元に、既存のビジネスモデルを変革したり、新たなビジネスを創出する事になります。
Netflixの例
ビジネスモデルの変革として有名な例がNetflix(ネットフリックス)です。
Netflixは、当時、店舗に行く必要があったレンタルDVD業界に、オンラインでレンタルができるサービスとしてスタートしました。
ウェブ上で申込みをすると、DVDが自宅に届くというサービスでしたが、この時点で従来型のビジネスをITによって変革しました。
その後、顧客データに基づいて各会員別におすすめの作品を提案するレコメンド機能を導入しました。
これにより、企業はさらなる成長を遂げます。
そして、DVDのレンタル事業から、ビデオ・オン・デマンド方式によるストリーミング配信サービスに移行し、すべてがオンライン上で行えるようになりました。
現在は、テレビやゲーム機、スマートフォンやタブレット向けアプリも提供され、DVDレンタル業界だけでなく、テレビ業界にも影響を与える一大プラットフォームに成長しました。
Netflixはこのように、デジタル技術を活用し、DVD業界、テレビ業界を変革した事例です。
メルカリの例
既存のビジネスをデジタル化して成功を収めた日本国内の例として、メルカリが挙げられます。
メルカリが実現した変革はシンプルで、フリーマーケットのオンライン化し、スマートフォンで簡単に匿名で個人売買が行えるようにしたことです。
これにより、不要なものを売りに出す事が誰でも行えるようになり、スマートフォンアプリによって、その敷居はさらに下げられました。
さらに、顧客体験を向上するために様々なデジタル技術が活用されています。
例えば、出品者が登録した商品写真をAIが分析し、商品名やカテゴリーなどを自動で入力する機能や、バーコードを読み取ることで商品情報の入力を省ける機能が搭載されています。
AIを活用した規約違反の商品を検出機能も提供し、あんしん・あんぜんな取引を実現しています。
このように、既存のビジネスをデジタル化し、さらにデジタル技術の活用でサービスを成長させ続けているDX事例がメルカリです。
その他の例
このほかにも、オンラインで内見ができる仕組みを提供する不動産企業や、オンライン接客やバーチャル試着を提供するアパレル企業など、デジタル技術を活用することで新たなサービス・事業が誕生しています。
ビジネスモデルの変革だけがDXではない
DX推進というと、Netflix等の例に挙げたような「ビジネスモデルの変革」に注目が集まりがちですが、先に述べたように、それだけがDXではなく、これらの取り組み全てが、デジタルトランスフォーメーションなのです。
DX企業規模の大小に限らず取り組む事ができ、また、これからの時代には必要な取り組みであると言えます。
組織での具体的な進め方
ここまで、デジタルトランスフォーメーションの大枠の進め方をご紹介しましたが、組織として進める場合、どのような手順を取るのが一般的なのかをご紹介します。
経済産業省が行っている「デジタル時代の人材政策に関する検討会」によると、「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の成功パターン(仮説)」として次のようにまとめられています。
- 意思決定 : 経営層による戦略策定
- 全体構想・意識改革 : 全社を巻き込んだ変革準備
- 本格推進 : 社内のデータ分析・活用
- DX拡大・実現 : 顧客接点やサプライチェーン全体への変革の展開
この資料は以下のページからご覧いただけます。
「デジタル人材育成プラットフォームの検討について」(経済産業省)
そして、これらの戦略や体制づくりに有用なのが、「デジタルガバナンス・コード」の策定です。
デジタルガバナンス・コードとは、DX時代に対応するための組織の行動規範・原則の事で、経済産業省による「Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会」で、その枠組みが策定されました。
自社のDX推進に当たっては、自社のデジタルガバナンス・コードを策定することで、「何をどのように進めるのか」を明確にできます。
デジタルガバナンス・コードに関しては以下の記事を参考にしてみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
DXをステップに分けて考える事で、「何を行うか」をイメージしていただければ幸いです。
今後も、DX推進のためになる情報や、事例を紹介してまいります。
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