簡単に説明すると
DX認定制度とは、DX推進の準備が整っている事業者を認定する国の認定制度です。
この認定制度の対象は、法人だけではなく個人事業者も含まれます。
この認定制度は、2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づいて設立されました。
運営体制としては、独立行政法人情報処理推進機構(IPA: Information-technology Promotion Agency, Japan)が事務局として事業者の窓口対応や審査を行い、認定は経済産業省が行います。
費用は無料です。
DX認定制度で認定を受けた事業者は、IPAが運営するDX推進ポータルに掲載される他、DX認定事業者を示すロゴマークを名刺やウェブサイトに使用することができるようになります。
何を審査するのか
DX認定制度では、企業や個人事業者がDX推進の準備ができているかを審査します。
この「DX推進の準備ができているという状態」を、国は「DX-Readyの状態」と呼んでいます。
「DX-Readyの状態」とは、具体的に以下のように定義されています。
DX-Readyとは、「経営者が、デジタル技術を用いたデータ活用によって自社をどのように変革させるかを明確にし(1)、
実現に向けた戦略をつくる(2)とともに、
企業全体として、必要となる組織や人材を明らかにした上で(2.1)、
ITシステムの整備に向けた方策を示し(2.2)、
さらには戦略推進状況を管理する(3,4)
準備ができている状態」を意味する。
出典 : 「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」(経済産業省 情報技術利用促進課 / 独立行政法人 情報処理推進機構)
これは、経済産業省がDX時代の組織統治の規範を定めた「デジタルガバナンス・コード」に記されている内容と対応しています。
そして、申請書には、次の項目を記入する必要があります。
- (1) 企業経営の方向性及び情報処理技術の活用の方向性の決定
- (2) 企業経営及び情報処理技術の活用の具体的な方策(戦略)の決定
- (2) ① 戦略を効果的に進めるための体制の提示
- (2) ② 最新の情報処理技術を活用するための環境整備の具体的方策の提示
- (3) 戦略の達成状況に係る指標の決定
- (4) 実務執行総括責任者による効果的な戦略の推進等を図るために必要な情報発信
- (5) 実務執行総括責任者が主導的な役割を果たすことによる、 事業者が利用する情報処理システムにおける課題の把握
- (6) サイバーセキュリティに関する対策の的確な策定及び実施
これらの項目も、以下の表のように、デジタルガバナンス・コードに記されている項目と対応関係にあります。
デジタルガバナンス・コードの項目 | DX認定制度の申請書の項目 |
---|---|
1.経営ビジョン・ビジネスモデル | (1) |
2.戦略 | (2) |
2.1.組織づくり・人材・企業文化に関する方策 | (2) ① |
2.2.ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策 | (2) ② |
3.成果と重要な成果指標 | (3) |
4.ガバナンスシステム | (4)(5)(6) |
そして、組織や事業としての体制や方針は、機関承認を得た公開文書に公表されている必要があります。
これらの媒体は、ホームページやアニュアルレポート、統合報告書、ITレポート、CSRレポート」等も含まれるようです。
詳しい申請要件や公表媒体の種類は前述のDX認定制度 申請要項にまとめられています。
申請までに何をすべきか
上述の通り、申請の前には、デジタル技術を活用した経営について方針をまとめ、それらを公表しておく必要があります(方針の説明や公表媒体は、申請書に記載する必要があります)。
さて、「申請の前準備として何をどのように進めればよいのか」についてですが、経済産業省が公開している「DX認定制度の概要及び申請のポイントについて」に、「DX認定取得のために必要と想定されるプロセスのイメージ例」が挙げられていますのでご紹介いたします。
- 「経営ビジョン」を策定する
- 取締役会の承認を取り、公表する
- 「DX戦略」を策定する(体制・組織案、ITシステムの整備に向けた方策)
- 取締役会の承認を取り、公表する
- 「DX戦略推進管理体制」を策定する
- 公表する
- 経営者による戦略推進状況等の情報発信を行う
- 「DX推進指標」等による自己分析を行い結果をまとめる
- 「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」等による対策を行い、セキュリティ監査報告書をとりまとめる
DX認定制度の費用
この制度は無料で申請できます。
申請はいつできるか
1年を通して、いつでもウェブから申請が可能です。
認定を受けるメリットとは
この制度を利用するメリットは大きく以下の3つが挙げられます。
- 自社にDX推進のための基盤を整備できる
- 国が認定したDX-Readyの組織であると公表できる
- "DX銘柄"の選定基準の1つをクリアできる
- 支援措置が受けられる
DX推進のための基盤を整備できる
「DX-Readyの状態」になるために、自社のこれからの在り方を考え、議論し、体制を整える必要があります。
この過程こそが、DX認定制度を受けるメリットとも言えるのではないでしょうか。
体制整備に当たって、何をすべきかは、DX認定制度のガイダンスや、デジタルガバナンス・コードに記載されています。
この情報を自社内で共有し、自社で実施するためには、何が必要か、どうすべきかを議論すること、そして実施のための体制を作り上げていくという準備過程が、DX認定制度を受ける一番のメリットではないかと思います。
*参考
「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」(経済産業省 情報技術利用促進課 / 独立行政法人 情報処理推進機構)
「Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会 デジタルガバナンス・コード」(METI/経済産業省)
DX-Readyの組織であると公表できる
認定を受ける事で、DX認定制度の認定事業者としてDX推進ポータルに掲載される他、DX認定のロゴマークをウェブサイトや名刺で利用することができるようになります。
つまり、DX推進の準備が整った国認定の企業であるとアピールすることが可能になります。
"DX銘柄"の選定基準の1つをクリアできる
"DX銘柄"とは、経済産業省が東京証券取引所と共同で実施している取り組みで、東京証券取引所に上場している企業の中から、「企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業」を選定するというものです。
選定の必要条件の1つに、DX認定制度の認定事業者である事、があるため、認定されると"DX銘柄"の選定基準の1つをクリアしたことになります。
参考 : 「DX銘柄についてのご案内」(IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)
支援措置が受けられる
2021年8月6日に経済産業省が作成した「DX認定制度の概要及び申請のポイントについて」では、認定事業者が受けられるメリットに、次の2つの支援措置があると記載されています。
1. 税制による支援措置
この支援措置は「DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制」という名称で、具体的な支援内容は、以下のように記載されています。
産業競争力強化法に新たな計画認定制度を創設。部門・拠点ごとではない全社レベルのDXに向けた計画を主務大臣が認定した上で、DXの実現に必要なクラウド技術を活用したデジタル関連投資に対し、税額控除(5%又は3%)もしくは特別償却30%を措置します。
2. 中小企業者を対象とした金融による支援措置
この中小企業者向けの措置は次の2つが記載されています。
1つめが、「日本政策金融公庫」からの融資における優遇措置です。
<日本政策金融公庫による融資>
DX認定を受けた中小企業者が行う設備投資等に必要な資金について、基準利率よりも低い利率で融資を受けることができます。
2つ目が、「中小企業信用保険法」における優遇措置です。
<中小企業信用保険法の特例>
中小企業者は、情報処理システムを良好な状態に維持し、企業経営において戦略的に利用するために必要となる設備資金等について、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。
このような優遇措置は毎年用意されるものではないかもしれませんが、認定を受ける検討材料のひとつになるでしょう。
申請から認定までの期間は約4か月
DX認定制度に申請してから、認定を受けるまでの日数は、60日とされていますが、この日数には、土日を含まないため、カレンダー上では約3か月という事になります。
さらに、審査の締め日の兼ね合いで、さらに1か月ずれることもあるとされています。
そのため、実際に必要な日数は、カレンダー上で約4か月以上はかかると計画しておくと良いでしょう。
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