DNT会員向けに、11/10~11にかけてDX先端地である会津で学ぶツアーを開催しました。
藤井さん訪問
福島県西会津町のCDO(町最高デジタル責任者)である藤井靖史さんに、西会津町や磐梯町のDXの内情・現状についてお伺いしました。
西会津町では2021年3月から「西会津町デジタル戦略」を策定しており、藤井さんは2020年10月に町デジタル戦略アドバイザーに委嘱され、戦略策定にかかる指導・助言などをされてきました。
2021年4月からは町最高デジタル責任者に就任し、企業や町民を巻き込みながらデジタル・トランスフォーメーションの推進に取り組んでいらっしゃいます。
磐梯町のDX事例
- 副業人材の積極採用や、それに伴うデジタル前提組織への改革(ペーパーレス、クラウド、テレワークなど)といった組織改革を行った。
- DXはICT活用が本質ではない。何のためにツールを使うのか、組織変革をしツールも使う活動、働き方改革である。
西会津の事例
- 「西会津まちづくり基本条例」が定められており、ビジョンや哲学が明言されていた。
- ビジョン・哲学を実現するためにデジタル技術も活用した。それが結果としてDXと呼ばれる。
- 教育へのデジタルの活用。文房具の一つとしてのタブレットの使用。授業レベルの標準化のための動画授業の導入。
時代の変化
- 米軍の事例:ピラミッド型からネットワーク型の組織変化
⇒運用のためにデジタル機器・ツールが必要だった - コミュニケーション数の増加からプロジェクト管理ツールを利用
⇒情報が上がってくる時代から情報を取りに行く時代 - PDCAからOODAループへ
- 命を守るために、組織や運用の改善が必要になっている
お味噌汁理論
- 温度差から対流が起こり、構造ができる
⇒ネットワークから得られた情報にテクノロジーを加えたモノづくり
RYOENG株式会社訪問
RYOENG株式会社 代表取締役の折笠哲也さんに、会社のお取組みや設備のご紹介をいただきました。また、エネルギーの地産地消などについてもお伺いしました。
RYOENG株式会社の概要
エネルギーの重要を感じ、また再生可能エネルギーの普及を通じて豊かなエネルギー・食料・水・文化を次世代に残すことを目指し、東日本大震災の翌年、福島県会津美里町にて「会津太陽光発電株式会社」を設立。
実証実験を重ね雪国に適したパネル角度や架台を検討し、太陽光発電システムに関して福島県・近県に400件超の実績を有する。
2021年2月には社名を「RYOENG株式会社」に改め、排水GX事業(排水処理及び汚泥処理に関する事業)を主軸事業に転換し、排水処理に悩む全国の工場・企業の課題解決、捨てられてしまうはずだった水と油の再価値化、それによる地球温暖化防止と持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。
会津電力株式会社
折笠さんが常務取締役を務める会社で、地域内で資金を循環させ安定した雇用を作り、地域として自立するため、小型分散型発電所、小水力発電などの事業を行っている。
また、再生可能エネルギーで得られた余剰資金で子供の教育への寄付なども行っている。
地域マイクログリッドの構築
発電、小売りに加え、送電も自由化が始まる。対象区域内をマイクログリッド化し、 再生可能エネルギーを活用した対象地域内で電力の地産地消を行う実証をしている。
会津電力株式会社と喜多方市を中心にコンソーシアムを組み、地域マイクログリッド構築に向けて協議を進めている。
※マイクログリッド:平常時には再生可能エネルギーを効率よく利用し、非常時には送配電ネットワークから独立し、エリア内でエネルギーの自給自足を行う送配電の仕組みのこと。
太郎庵訪問
会津で知らない人はいないお菓子のお店、「お菓子の蔵 太郎庵」の2代目である目黒徳幸さんに、製造小売業業界の現状についてお話をお伺いしました。
太郎庵の理念
- お菓子が美味しいことが強みではなく、関係性が出来ていることが強み
- なかよしを作る戦略
⇒お客様、従業員、市場となかよくする製造現場の現状
- 製造現場はアナログが多い。特注伝票は紙で出力して工場に発注、ピックアップがアナログになっている。また、賞味期限の管理も紙で行っている。
- ポストイットで日報を書いてもらい、手書きの社長通信を作り社員とコミュニケーションをしている
- 現場ではホワイトボードで1日の予定や問題を共有しているが、効率化ができている。
SAP訪問
SAPイノベーションフィールド福島 所長の吉元宣裕さんに、取り組んでいる内容についてお伺いしました。
SAP概要
ドイツの会社。ERP(企業の人・物・金)を管理するシステムなどを提供。
SAPイノベーションフィールド福島概要
2019年、SPAジャパンが会津若松市のスマートシティ拠点であるICTオフィス「スマートシティAiCT(アイクト)」内に開設。
社会課題を「持続的に」「他企業や地域と連携して」「ビジネスから切り離さない方法で」解決することを目指す。
CMEsの概要
日本が抱える社会課題の一つである生産性の低さの解決を目指し、2021年に展開したプラットフォーム。
会津地域のものづくり企業がグループや団体になり共通で使用できるプラットフォームを作り、お金の面でもリソース(人材)の面でも中小企業の生産性を効果的に上げることを目指す。
導入前支援が実質無償であったり、対面支援型の運用保守サービスとなっている点が革新的。
※CMEs : コネクテッド・マニファクチャリング・エンタープライゼス。ANF会員企業が共通で利用できる中小企業向けの共通業務プラットフォーム
※ANF : 会津産業ネットワークフォーラム。福島県会津地域の産業界を軸に、企業の立場から地域とともに成長・発展することを目的として2008年に設立された産官学の連携組織。
CMEs導入事例
例えば、精密機械部品の加工を行う会社では、今までは製品の資材調達から設計、加工、熱処理まですべての工程に人が介在し、その都度Excelベースでの入力が発生していた。 CMEsを導入することで、受注データから納期に合わせた自動での材料発注・製造指図書の発行ができるようになり、また 、製造現場のデータが一元管理されることにより、個別原価が把握でき、減価差異がどこにあるのか、問題の把握が容易になったなどの効果が得られた。
導入した会社を分析したところ、生産性27%、営業利益2%の向上効果が見込まれることが判明した。
アクセンチュア・イノベーションセンター福島訪問
アクセンチュア・イノベーションセンター福島センタ 共同統括のアクセンチュア株式会社 中村彰二朗さんに、会津スマートシティの取り組みについて伺いました。
アクセンチュア・イノベーションセンター福島の概要
市民中心のスマートシティ、そして地方創生・デジタル田園都市国家構想の実現に向けて、プロジェクトの拠点として2011年に開設。
会津若松市の「スマートシティ会津若松」計画をもとに、市民中心の次世代社会創造を目指し先端デジタル技術を駆使した実証を行ってきた。
取り組みは日本を代表するスマートシティのモデルとして国から表彰されている。
※デジタル田園都市国家構想:「デジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決し、誰一人取り残されずすべての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現する」そして「地域の個性を活かした地方活性化をはかり、地方から国全体へのボトムアップの成長を実現し、持続可能な経済社会を目指す」構想。
スマートシティAiCT
- ITエンジニアの人材育成を含めた具体的な施策として開設。
- 会津若松をデジタルの先端実証フィールドとして、国内外の大企業、IT企業の32社が入居して事業に取り組んでいる。
アクセンチュア・イノベーションセンター福島の取り組み
- ミッション:震災復興、地方創生、低生産性、Post Corona
- 都市部の一極集中から、機能分散型の自立したスマートシティへ。
- 「都市OS」を導入し、決済やエネルギー、医療、行政関係などの複数分野にまたがったデータ流通・サービスを支える。
- 「市民主導」の考えが重要。
- データは市民のもの。市民本人の同意を得る「オプトイン」方式でデータを収集する。
- 市民はデータを提供することで、パーソナライズされたサービスを得ることができる。
- 市民・地域・企業が当事者として地域に深く関与しながら、地域のあり方を自分たちで決める「三方良し」をルールとする。
- 行政単位ではなく、生活圏でデザインする。
スマートシティの事例
- 市民ポータルによる情報提供
- 除雪車ナビによる冬の除雪状況の確認
- デジタル防災「マイ ハザード」 など デジタル地域通貨でのキャッシレス決済手数料の無料化を取り組み中。
アクセンチュア株式会社訪問
アクセンチュア株式会社 鈴木鉄平さんに、CMEsの詳細や今後の展開についてお話を伺いました。
CMEsについて
- 基幹システムを自社で持たなくとも、サービスに任せて浮いたお金をデータ活用に利用できる。
- まずAI、IoTをやる、のではなく、業務体制を変えなければAI、IoTの効果が出ない。
- 社員100~300人の中量産形態の企業が対象。
- 比較的デジタル化が進んでおらず、Excelなど手作業が多い企業は生産性向上の余地が大きい(CMEsの効果が出やすい)。
現在の活動
- 2021年4月から展開し、11月時点で3社導入している。検討中・興味を持っている企業は20社を超える。
- 地方中小製造業では情報収集や勉強している状態が多く、大企業と差が広がっている。競争領域のDXフル活用のためにも、非競争領域のデジタル化が必要になっている。
今後の展開
- 非競争領域に対する個別システム(受託開発)をプラットフォーム型のシステムに変更することで、保守・運営で済ませ、余剰を競争領域に投資できるようになることを目指す。
- 2023年までに東北の地域リーディングカンパニーに導入し、他地域へも順次展開していくこと、また保守運用は地域のIT企業と実施することを検討している。
- 導入には半年以上の期間が必要だが、データ整備等を行い人的対応を減らすことで対応できる。短期集中型のコンサルティングで対応する。
- 導入後は、原価割れ等の不都合なデータが露出し、問題に対する本質的な対応の検討が必要になる。コンサルティングオプションを別途拡充予定。
- 導入による効果を高めるため、導入前準備期間として、自己研鑽型コンテンツを整備し、業務プロセス・フローの理解等が一定水準に達した企業に導入支援をしていく。